こんにちは。
小野晄子です。
易経や易占いに興味をお持ちのあなたへ。
今回は、易64卦の中の6番目の易「天水訟」(てんすいしょう)という易について、意味やメッセージなどをなるべくわかりやすく解説します。
- 「天水訟」の易にはどんな意味がある?
- 易占いで「天水訟」が出た時にはどう読み解く?
- 易経にはどんなことが書いてある?
などについて知りたいという方は、下記お読みになってみてくださいね。
天水訟の易の形
天水訟は、「てんすいしょう」と読みます。
易の形は、下記のように表されます。
上卦と下卦
上卦は「乾」、下卦は「坎」
水の上に天がある形となります。
正と不正
二爻と四爻が正、あとは不正となります。
比と応
初爻と四爻、三爻と上爻が応じています。
初爻と二爻、二爻と三爻、三爻と四爻が比しています。
天水訟の易の基本的な意味
天水訟(てんすいしょう)は、64卦ある易のうち6番目の卦となります。
「天水訟」は「争い」という意味を持つ易です。
争いの起きる理由や、争いを収めるための道、争いを処する方法について書かれているのが「天水訴」の易となります。
どうして争いが起きるのか?
争いとはどうして起きるのでしょうか?
天水訟の易の形を見ると、上卦が「天」、下卦が「水」です。
天は上へ上へと昇っていくエネルギーを持つ気、水は下へ下へと落ちていくエネルギーを持つ気です。
天水訟の易の形を見ることで、争いとは、自分と相手の向かう方向性が異なることによって起きるということが読み解けます。
向かう方向性や志が異なることによって争いが起きる、ということです。
また「天」の気質は強く剛強、「水」の気質は険しさがあります。
下の立場の者が従順であれば争いは起こらないですが、上の立場の者が強く、下の立場のものが険阻であるときに争いが起きる、というのが天水訟の易の形です。
争いを処する道
「天水訟」では、争いを解決し処する道について書かれています。
- 自分の中に正義や正しさ、誠があったとしても、それが周りに理解されないという境遇の中で、自らの正しさを主張することなく、自ら戒め、忍耐辛抱すること。
- 争いは長引くほど大きくなるのだから最初の時点で収めること。争い始めたら早い段階で自分から身を引くことが徳である。
- 徳を備えた偉大な人物、第三者に争いの中に入ってもらい収めてもらうこと
が争いを処する道だということが書かれています。
最後まで争うことが凶、中庸の徳を備えるときは吉
争いが起きると、どちらも「自分の方が正しい」と主張してしまうため、どこまでも争いは大きくなって行ってしまいます。
このように、争いを大きくし、長引かせ、最後まで争うことは凶となります。
反対に、自分が正しさや正義、誠を持っていたとしても、それを自ら収め、忍耐し辛抱すること。
このような姿勢や徳を備えていれば吉なのだというのが天水訟の教えです。
個人に限らず、組織対組織、国と国の関係性においても同じことが言えます。
天水訟の教えを誰もが理解すれば、争いごとや戦争はなくなりますよね。
でも自分が正しさを持っているのにそれを収め、争わない、全てを相手に持っていかれたとしても、それを良しとする、なかなか出来ることではありません。
それが出来れば「吉」なのだという教えが天水訟なのです!
天水訟の本卦
<卦辞>
天水訟の易の卦辞を読んでみましょう。
訟。有孚窒。惕中吉。終凶。利見大人。不利渉大川。
訟は孚(まこと)ありて窒がる。惕れ(おそれ)て中すれば吉。終えんとすれば凶。
大人を見るに利あり。大川を渉るに利あらず。
(しょうはまことありてふさがる。おそれてちゅうすればきち。おえんとすればきょう。たいじんを見るにりあり。たいせんをわたるにりあらず)
自分の中に正義や誠があるのに道が塞がってしまう。
忍耐して適当なところで争いを止めれば吉である。
最後まで争いを終えようといつまでも争えば凶である。
偉大な人物に指導を受け、裁決してもらうのが良い。
争っている時には大きな仕事や大きな事業を成就することはできない。
ということが書いてあります。
天水訟の象伝
象曰、天興水違行訟。君子以作事謀始。
象に曰く(いわく)、天と水、違いに行くは訟なり。君子以って事を作す(なす)には始めをはかる。
天は上ろうとし、水は下ろうとする、反対に行こうとするから争いが起こる。
君子は何か事を成そうとする時には、あらかじめ慎重に考えて行動する。
と書いてあります。
天水訟の6つのストーリー
それでは、天天訟の中の6つのストーリーである、初爻から上爻までの易経の言葉と意味を見ていきましょう。
天水訟 初爻
初六。不永所事。小有言。終吉。
(初六は、事とするところを永くせず、少しく言うことあれども終(つい)には吉なり)
象に曰く、事とするところを永くせずとは、訟は長くすべからざるなり。少しくもの言うことありと言えども、その弁明らかなり。
<意味>
争いは長く続けるものではありません。
早いうちに止めることで、多少の言い合いがあったり、不満はあっても吉となります。
天水訟 二爻
九二は、訟に克たず、歸りて逋る。その邑人(ゆうじん)三百戸にして眚いなし。
(きゅうじは、しょうにかたず、かえりてのがる。そのゆうじんさんびゃくこにしてわざわいなし)
※眚い(わざわい)=自分が産んだ災いという意味です。
※邑(ゆう)とは村のことです。
<意味>
訴訟に勝とうとすることを止めて、早く引き返してきたことによって、自分だけでなく自分の領地や周りの人にも災いが降りかかることはありませんでした。
争いとは早いうちに止めるべきものなのです。
天水訟 三爻
六三は、旧徳に食む(はむ)。貞なればあやうけれども終に吉なり。或いは王事に従えば成すなし。
(りくさんは、きゅうとくにはむ。ていなればあやうけれどもついにはきちなり。あるいはおうじにしたがえばなすなし。)
※旧徳(きゅうとく)とは、その人が本来持っている徳=領地や持ち物のことを言います。
※食む(はむ)とは、受けるという意味です。
<意味>
三爻は不正で上の立場の人に対して不満を抱えている立場を指しています。
多少の不満を持ってはいても、本来持っている領地や持ち物に満足し、上の立場の人に従い、従順に命令に従うことによって、吉となります。
天水訟 四爻
九四は、訟に克たず。復って(かえって)命に即き、渝て(かわりて)、貞に安んずれば、吉なり。
(きゅうしはしょうにかたず。かえってめいにつき、かわりて、ていにやすんずれば、きちなり。)
※渝る(かわる)=川の流れを変えるように今までの流れを自ら変えること
<意味>
四爻は不正で陽なので、争いを起こしてしまいます。
争いを起こすけれども、復る(かえる)=正しい道へ返り、志を改め反省することで吉となります。
間違いを犯したとしても、それを反省して改めれば吉ですよ、ということが書いてあります。
天水訟 五爻
九五は、訴え元吉なり。
(きゅうごは、うったえげんきつなり)
<意味>
五爻は「正」で、中の徳を備えていますから立派で偉大な徳を備えた人物です。
正しい徳を持っているので、訴訟も勝ちますし、上手くいきます。
天水訟 上爻
上九は、或いはこれに鞶帯(はんたい)を錫う(たまう)。終朝に三たびこれを褫わん(うばわん)。
(じょうくは、あるいはこれにはんたいをたまう。しゅうちょうにみたびこれをうばわん)
※鞶帯(はんたい)とは帯、礼服のことです。
※終朝に(しゅうちょうに)とは、午前中のうちに、つまりあっという間に、という意味です
※三たびは、たくさんを意味します。
<意味>
上爻は、不正で陽ですのでやり過ぎ、行き過ぎを表しています。
強引に争いを押し切って勝ち、礼服(褒美)を得たとしても、あっという間に失ってしまったり、何度も奪われてしまうということになります。
最後まで争ったとしてもそれは凶です、という意味です。
ということで以上、今回は、64の易の卦の中の6番目の易、「天水訟」(てんすいしょう)という易について紹介しました!
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